キルアがゴンを光にたとえる場面は、第19巻 No.199「光と影」に描かれています。アニメ(2011年版)では第85話「ヒカリ×ト×カゲ」にあたります。派手な戦いのない回ですが、キルアという人物を読むうえで外せない一話です。
どんな場面か
キメラ=アント編の前半。ピトーの前から逃げ延びたキルアは、気を失ったゴンを背負って国境まで戻ります。目を覚ましたゴンは、カイトは生きていると迷いなく言い、強くなって助けに行こうとすぐに前を向きます。そのまっすぐさを隣で見ながら、キルアは自分がゴンのそばにいていいのかと、心の中で問いかけます。
考察
口に出さない言葉として描かれている
まず事実として押さえておきたいのは、この言葉がゴンに向けて語られたものではなく、キルアの心の中の問いかけとして置かれていることです。ゴン本人は、キルアがそんなことを考えているとは知りません。
ヨミコミでは、ここにキルアの性格がいちばんよく表れていると読みます。キルアは、感じたことをそのまま口にするタイプではありません。本当に大事なことほど、自分の中にしまっておく。だからこそ読者だけが、この問いを聞くことになります。
なぜ「今」迷いが出たのか
直前の状況を思い出してください。カイトはピトーに敗れ、二人は逃げるしかなかった。同じ出来事を経験したのに、ゴンはカイトの生存を信じて前に進もうとし、キルアは同じようには信じきれない。
この差は、どちらが正しいかという話ではないとヨミコミは考えます。キルアは暗殺一家に生まれ、状況を冷静に見積もる目を持っています。その目で見れば、ゴンの希望はまぶしすぎる。まぶしいものを見るとき、人は同時に自分の影を意識します。話タイトル「光と影」は、ゴンとキルアの対比であると同時に、キルアが自分自身をどこに置いているかを示していると読めます。
ハンター試験編との「逆転」
ここで思い出したいのが、第5巻 No.37「光と闇③」です。兄の言葉に支配されて試験を去ったキルアを取り戻すため、ゴンは友だちになるのに資格はいらないと言い切りました。
No.199のキルアは、その裏返しの問いを抱えています。ゴンは資格など要らないと言ったのに、キルアは自分にゴンの隣に立つ資格があるのかを気にしている。ゴンに救われた側だからこそ、その恩をまっすぐ受け取れない。ヨミコミでは、ここがキルアとゴンの関係の非対称さであり、キメラ=アント編を通して描かれ続けるテーマだと読みます。
答えは言葉ではなく行動で出る
この問いに、キルアはこの話の中で答えを出しません。けれど物語は、この後キルアが自分を縛っていたものと向き合う場面へ進んでいきます。隣にいていいのかという問いは、隣にいるために何をするかという行動に置き換わっていく。その流れの起点が、この静かな一話です。
今の自分に置き換えると
身近に、自分にはないまっすぐさを持った人がいると、ふと「自分はこの人の隣にふさわしいだろうか」と考えることがあります。友人でも、家族でも、一緒に何かをつくる相手でも同じです。
キルアの迷いから読み取れるのは、その問いが出てくること自体が、相手を大事に思っている証拠だということです。どうでもいい相手なら、隣にいていいかなど考えません。
そしてもう一つ。ゴンにはゴンの光があり、キルアにはキルアの冷静な目がある。気を失ったゴンを背負って国境まで戻ったのは、そのキルアでした。相手と同じになろうとするより、自分の持ち場で何ができるかを考えるほうが、隣にいる理由ははっきりしていきます。
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この問いの前後にあたる、ゴンがキルアを取り戻しに行く場面と、キルアが自分を縛るものと向き合う場面もあわせてどうぞ。