レオリオがジンを殴る場面は、第31巻 No.325「参戦」です。アニメ(2011年版)では第140話で描かれています。会長選挙編の流れを一気に変えた、レオリオ最大の見せ場の一つです。
どんな場面か
会長選挙編。選挙の演説会の質疑の場で、レオリオはジンに、なぜ重体のゴンを見舞わないのかと問いただします。ジンの答えははぐらかすようなもので、レオリオの怒りが爆発します。演台を殴った拳は、念によって離れた席にいたジンの顔に届きました。会場は沸き、この一件をきっかけにレオリオの得票は一気に伸びます。
考察
レオリオは読者の気持ちを代弁した
事実として描かれているのは、レオリオが、ゴンの父でありながら見舞いに行かないジンに対して、正面から怒ったことです。
ヨミコミでは、この怒りを、多くの読者が抱いていた気持ちの代弁だと読みます。ゴンは父に会うためにハンターになり、ここまで旅を続けてきました。その息子が重体なのに、父は会いに来ない。理屈はどうあれ、それはおかしいと感じるのが自然です。レオリオは、ハンター試験からゴンと共に歩んできた友人として、その当たり前の感情を、ためらわずにぶつけました。
ジンは一貫して、自分から会いに行かない父親だった
一方で、ジンの側から見ると、この態度は突然のものではありません。
第8巻 No.66で、ゴンが聞いたカセットテープの中のジンは、会わない理由を自分の身勝手さとして語りつつ、会いたければ探しに来いと言っていました。第18巻 No.185では、ゴンがグリードアイランドから父のもとへ飛ぶつもりが、ジンの仕掛けによってカイトのところへ届きます。ジンは一貫して、自分からゴンのもとへ行くのではなく、ゴンが自分の力でたどり着くのを待つ父親として描かれてきました。
そう考えると、レオリオとジンの衝突は、正しさ同士のぶつかり合いとしても読めます。友人を思う者のまっすぐな怒りと、自分の流儀を曲げない父親。どちらか一方が完全に間違っているとは言い切れないところに、この場面の面白さがあります。
ジンはわざと殴られたのか
この場面については、ジンがあえて拳を受けたのではないか、という読み方もあります。ここは作中の描写だけでは断定しにくい部分なので、ヨミコミではどちらとも言い切りません。
ただ、もしジンがレオリオの怒りを受け止めることを選んでいたのだとすれば、それはジンなりの、ゴンへの向き合い方の一つだったとも読めます。反対に、純粋にレオリオの一発が届いたのだとすれば、それは友人の本気が、父の流儀を一瞬だけ突き破った瞬間です。どちらの読み方でも、この一発がゴンのために放たれたことは変わりません。
選挙の流れを変えたもの
この一件で、レオリオの得票は大きく伸びます。選挙は、組織の次のリーダーを選ぶ場です。候補者たちがそれぞれの思惑で動く中で、票を集めたのは、計算された演説ではなく、友人のために本気で怒った一人の行動でした。人は、何をどう語るかより、何のために怒れるかを見ている。この場面は、そういうリーダー像の一面を描いていると読めます。
世界樹の対話へつながる一発
ゴンとジンが向き合って言葉を交わすのは、選挙編の終盤、第32巻 No.338〜339の世界樹の上です。ジンが若い頃の原点を語り、寄り道を楽しむ生き方をゴンに伝える場面です。レオリオのまっすぐな一発と、ジンの遠回りな生き方。この二つを並べて読むと、ジンという父親の輪郭がよりはっきり見えてきます。
今の自分に置き換えると
大切な人が軽く扱われていると感じたとき、それを口にするのは勇気がいります。場の空気を壊すかもしれないし、相手には相手の事情があるかもしれない。
レオリオの場面から読み取れるのは、誰かのために本気で声を上げることが、ときに周りの人の心を動かすということです。同時にジンの側を見ると、人にはそれぞれの向き合い方があり、外から見える態度だけで相手の思いを決めつけられないこともわかります。
怒りを飲み込むことも、言葉にして伝えることも、どちらも選べます。大事なのは、それが誰のための怒りなのかを、自分で分かっていることなのかもしれません。
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レオリオの一発を受けたジンが、どんな父親として描かれてきたのか。カセットテープの場面から世界樹の上の対話まで、ジンの場面を続けて読むと、この一発の意味が変わって見えてきます。