クラピカが旅団の団長を人質に取りながら、復讐よりも仲間を取り戻すことを選ぶ場面は、第13巻 No.117「9月4日⑯」です。ヨークシンシティ編のクライマックスで、クラピカの価値観がもっともはっきり表れる回の一つです。
どんな場面か
ヨークシンシティ編の終盤。クラピカは旅団の団長クロロを人質に取り、飛行船で旅団のパクノダと会って、人質交換の条件を取り決めます。クラピカが最優先にしたのは、ゴンとキルアを取り戻すことでした。そして滅ぼされた一族の少年の姿を思い浮かべ、もう誰も失いたくないと心に誓います。
考察
頭を押さえても、旅団は止まらない
この人質交換に至るまでの流れのなかで、クラピカは、団長を失っても旅団は止まらないことに気づいています。
これは、復讐を目的とするクラピカにとって大きな意味を持つ気づきだとヨミコミは考えます。団長を捕らえた時点で、クラピカは旅団に対して最大の切り札を手にしていました。もし団長さえ押さえれば旅団が崩れるのなら、復讐はここで大きく前に進みます。けれど旅団は、頭一人に依存する組織ではなかった。つまり、この人質だけでは復讐は終わらない。
その事実を前にして、クラピカは切り札の使い道を変えます。復讐を進めるためではなく、仲間を取り戻すために使う。この切り替えが、この場面の核心です。
復讐の根っこにあったもの
この場面でクラピカが口にする「もう」という一語は、一度すべてを失った人だけが使える言い方です。クラピカが最後に思い浮かべたのは、滅ぼされた一族の少年の姿でした。
ヨミコミでは、ここに復讐と仲間を選ぶことが、実は同じ根から出ていることが示されていると読みます。クラピカが旅団を追うのは、大切な人たちを奪われたからです。その痛みを知っているからこそ、今そばにいるゴンとキルアまで失うことだけは受け入れられない。復讐を後回しにしたのは、復讐を捨てたのではなく、復讐の出発点にあった感情に従った結果だといえます。
第10巻 No.84との違い
第10巻 No.84で、クラピカは旅団の一人と向き合い、仲間の居場所を問い詰めました。あのときのクラピカは、旅団を追うことにすべてを向けていたように描かれています。
No.117のクラピカは、同じ旅団を前にしながら、別のものを優先しています。No.84の経験がこの判断にどう影響したかは作中で明言されていないので断定はしません。ただ二つの回を並べると、クラピカの中で、守りたいものの順番がはっきりしていく過程として読むことができます。
敵の側も、仲間を選んでいた
見逃せないのが、交渉相手であるパクノダの存在です。彼女もまた、団長を取り戻すという、自分たちの仲間のための選択をしようとしています。第13巻 No.119では、その選択の結末が描かれます。
クラピカも旅団も、それぞれに仲間を守ろうとしている。だからこそ、この人質交換は単純な善悪の対決にならず、読み返すたびに重さが増していくのだと考えます。
今の自分に置き換えると
長く追いかけてきた目標と、目の前にいる大切な人。そのどちらを優先するかを迫られる場面は、規模は違っても誰にでもあります。
クラピカの選択から読み取れるのは、迷ったときは、そもそもその目標を追い始めた理由まで戻ってみる、という考え方です。何のためにそれを目指していたのか。その根っこにあるものと、今守ろうとしているものが同じ方向を向いているなら、目標を後回しにすることは、目標を裏切ることにはなりません。
優先順位を変えることは、ぶれることとは違います。自分にとって何がいちばん大事かを、状況に合わせて確かめ直すことでもあります。
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クラピカが最初に旅団の一人と向き合った場面と、この人質交換の結末を描いた場面を、前後の記事でたどれます。