クラピカが幻影旅団のウボォーギンと決着をつける場面は、第10巻 No.84「9月2日⑥」です。一族を奪った旅団への復讐が、初めて現実のものになる回で、ヨークシンシティ編の大きな転換点にあたります。
どんな場面か
ヨークシンシティ編。鎖で捕らえたウボォーギンに対し、クラピカは念を封じる鎖の仕組みを明かし、仲間の居場所を吐かせようとします。何度問い詰めても、相手は殺せとしか答えません。クラピカは心臓に鎖をかけたうえで条件を突きつけますが、ウボォーギンは答えを拒み、倒れます。そしてクラピカの瞳は、元の色に戻ります。
なお、直前の第9巻 No.83(第9巻の最終話)では、クラピカの絶対時間(エンペラータイム)が説明されています。能力の仕組みをまとめて押さえたい場合は、No.83から続けて読むと流れがつかみやすくなります。
考察
仕組みを明かしたのは、脅しを本物にするため
事実として、クラピカは捕らえたウボォーギンに、自分の鎖の仕組みを明かしています。念能力者にとって、自分の能力の中身を敵に話すことは、ふつうなら不利になりかねない行動です。
ヨミコミでは、これを尋問のための一手だと読みます。鎖がどういうもので、条件を破れば何が起きるのか。それを相手が理解していなければ、心臓にかけた条件は脅しとして働きません。クラピカは力で勝ったうえで、さらに情報を引き出すために、あえて手の内を見せたわけです。冷静な計算がなければできない行動で、クラピカの頭のよさと、目的に向かう執念の両方がここに表れています。
口を割らなかった相手が示したもの
一方で、ウボォーギンは最後まで仲間の居場所を答えませんでした。条件の意味を理解したうえで、答えないことを選んだと読めます。
ここで浮かび上がるのは、クラピカが敵として追ってきた旅団もまた、仲間を売らない集団だという事実です。一族を奪った相手にも、命より優先する仲間がいる。この構図は、ヨークシンシティ編の後半でさらに重くなっていきます。第13巻 No.119では、旅団のパクノダが仲間のために自分の身を差し出す場面が描かれます。No.84は、その流れの入り口でもあります。
元の色に戻った瞳
クラピカの瞳は、激しい感情が高ぶると緋色に変わります。そしてこの話の終わりに、その瞳は元の色に戻ります。
ヨミコミでは、この描写を、復讐の最初の一人を終えたあとに残ったものを示すものとして読みます。怒りが目の色を変えていたのだとすれば、その怒りが向かう先の一人がいなくなったとき、瞳は静まります。けれど、それは目的の達成ではありません。旅団はまだ残っていて、仲間の居場所も聞き出せなかった。勝ったはずなのに、手に入ったものはほとんどない。この落差こそが、この回の重さだと考えます。
復讐と、クラピカが次に選ぶもの
ヨークシンシティ編の終盤、第13巻 No.117で、クラピカは団長を人質に取りながら、旅団への復讐よりもゴンとキルアを取り戻すことを優先します。No.84で最初の一人と向き合った経験が、その判断にどう影響したかは作中で明言されていません。ただ、二つの場面を並べると、クラピカが復讐の先に何を守りたいのかが、少しずつ輪郭を持っていく過程として読むことができます。
今の自分に置き換えると
長く抱えてきた目標の、最初の一歩を踏み出したとき、思っていたような達成感が来ないことがあります。やっとここまで来たのに、残ったのは疲れと、まだ先が長いという実感だけ。
クラピカの場面は、もちろん日常とは比べられない重さの話です。それでも、そこから読み取れることはあります。目標に向かって一歩進んだあとに感じる空白は、失敗の印ではなく、自分が本当は何を求めていたのかを考え直す時間にもなりうる、ということです。
何のためにそれを始めたのか。その答えが、次の一歩の選び方を変えることがあります。
あわせて読みたい
この二日後、クラピカが復讐と仲間のあいだで下した決断と、そのとき旅団の側で起きたことを、続く二つの場面で読めます。