幻影旅団のパクノダが、仲間に記憶を込めた弾を撃つ場面は、第13巻 No.119「9月4日⑱」です。ヨークシンシティ編の終盤、旅団の側から描かれるもっとも重い場面の一つで、パクノダの最後の回でもあります。
どんな場面か
ヨークシンシティ編の終盤。クラピカとの人質交換を終えたパクノダは、団長の奪還と鎖使いの秘密を口外できない制約を負ったまま、仲間のもとへ戻ります。言葉では伝えられないことを伝えるため、彼女は旅団の創設メンバーの人数分の弾に記憶を込めて撃ちます。制約によってパクノダは倒れ、自分で最後にしてほしいと願います。
考察
話せないなら、話さずに伝える
事実として描かれているのは、パクノダが口外を禁じられた状態で、それでも仲間に情報を渡したことです。言葉にすれば制約に触れる。だから彼女は、自分の記憶そのものを弾に込めて渡すという方法を選びました。
ヨミコミでは、これを単なる能力の使い方の工夫ではなく、パクノダという人物の決断として読みます。彼女は、伝えれば自分がどうなるかを理解したうえで撃っています。黙っていれば自分は助かる。それでも、仲間が知るべきことを渡すほうを選んだ。
信じることは、受け取る側にも求められる
パクノダの問いかけは、撃つ側の覚悟だけでなく、撃たれる側の覚悟も問うている、とヨミコミは読みます。どれだけ大事なことを渡しても、相手が信じて受けとめなければ、それは届いたことになりません。
ここで描かれている信頼は、一方通行ではないと考えます。自分を信じてほしいと差し出す側と、それを受けとめる側。最後の場面でパクノダが託したのは、情報だけではなく、仲間なら受け取ってくれるはずだという信頼そのものでした。
創設メンバーの人数分という選び方
パクノダが弾を撃ったのは、創設メンバーの人数分でした。旅団の中には後から加わったメンバーもいますが、彼女が記憶を託した相手は、旅団の始まりから共にいた仲間たちです。
この選び方をどう読むかは解釈の余地があります。ヨミコミでは、パクノダが最後に頼ったのが、組織としての旅団というより、長い時間を共にしてきた人間同士のつながりだったことの表れだと読みます。
ウボォーギンとの対比
第10巻 No.84で、ウボォーギンはクラピカに問い詰められても、仲間の居場所を最後まで答えませんでした。仲間を守るために口を閉ざしたのです。
パクノダは逆に、仲間のために、口外を禁じられたことを伝えました。黙ることと、伝えること。行動は正反対ですが、どちらも仲間を優先した結果です。旅団という集団が、敵から見れば残酷でありながら、内側では強い結びつきを持っていることが、この二つの場面を並べるとよく見えてきます。
自分で最後にしてほしいという願い
パクノダは、自分で最後にしてほしいと願います。ここにどんな思いが込められているかは、作中の描写以上のことを断定できません。ただ、直前の第13巻 No.117では、クラピカもまた、仲間を失いたくないと心に誓っていました。敵同士でありながら、同じ夜に同じ種類の願いを抱いていた。その重なりが、ヨークシンシティ編の結末を単純な勝ち負けで終わらせていないのだと考えます。
今の自分に置き換えると
立場や約束の都合で、思っていることをすべては言えない場面があります。仕事でも、家族や友人との関係でも同じです。
パクノダの場面から読み取れるのは、言葉にできないときでも、伝える方法はほかにもありうるということです。そして、伝えようとする側の誠実さと同じくらい、それを受け取る側の信頼が大事だということでもあります。
何かを託されたとき、その人がどんな思いで差し出しているのかを考えてみる。何かを託すときは、相手が受けとめてくれると信じて渡してみる。この場面は、信頼が両側から成り立つものとして描かれています。
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同じ人質交換をクラピカの側から描いた場面と、旅団のもう一人が仲間のために口を閉ざした場面をあわせて読むと、この回の重さがより立体的に見えてきます。