グリードアイランド(G.I)をクリアしたゴンが、父ではなくカイトのもとへたどり着く場面は、第18巻 No.185「邂逅」です。G.I編の締めくくりであり、次の物語への入口にもなる回です。ここで明かされるジンの仕掛けは、ジンという父の人柄をよく表しています。
どんな場面か
G.Iをクリアしたゴンは、ゲームから持ち出したカードを使って、父ジンのもとへ飛ぼうとします。ところが、たどり着いた先にいたのはカイトでした。エレナの回想によって、ジンが事前に、ゴンが仲間と一緒に来るならカイトのもとへ、一人で来るなら自分のもとへ届くように指示していたことが明かされます。父の居場所を知る手がかりを前にして、ゴンは人から教わることを断り、自分の力で探すと決めます。
考察
意地悪な仕掛けか、息子への問いかけか
作中で描かれている事実は、ジンが行き先を二つに分けていた、ということです。一人で来れば父に会える。仲間と来れば、父の弟子であるカイトのもとへ行く。そしてゴンは、カイトのところにたどり着きました。
ここからはヨミコミの読みです。表面だけ見れば、ゲームをクリアした息子に会わないための意地悪な仕掛けです。ただ、分かれ道の条件が「仲間といるかどうか」になっている点に、ジンの考えがにじんでいるように思えます。
仲間と一緒に旅をしている息子を、ジンはあえて自分のところへ呼ばなかった。それは、仲間といるならその旅を続けろ、という返事とも読めます。会長選挙編でジンは、若い頃の王墓の調査で、うれしかったのは発見より仲間との握手だったと語っています(No.338「樹上」)。その価値観を持つ人が、仲間と来た息子の行き先を別に用意した。並べて読むと、この仕掛けがただの意地悪には見えなくなってきます。
行き先がカイトだったこと
もう一つ注目したいのは、行き先に選ばれたのがカイトだったことです。カイトは第1話で、くじら島の森でゴンを救い、父が生きていることを教えてくれた人物でした(No.1「出発の日」)。
ゴンの旅はカイトとの出会いから始まり、G.Iのクリアという大きな区切りで、再びカイトにたどり着く。ヨミコミはこの構造に、ジンがゴンの旅を「父に会う旅」とは別の方向へ開こうとしている意図を読みます。父ではなく、父の弟子に会わせる。それは、父の背中だけを追う旅から、自分の目で世界を見る旅へと進ませる一手だったのかもしれません。実際、このカイトとの再会が、次のキメラ=アント編への橋渡しになっていきます。
居場所を聞かないゴンの意地
ゴンは、父の居場所を人から聞くことを断ります。ここにもゴンらしさがよく出ています。
くじら島のテープで、ジンは会いたければ探しに来いと挑発していました(No.66「テープ」)。ゴンはその挑発を、正面から受けて立っているように見えます。答えを教えてもらえる場面で、あえて教わらない。ハンター試験の最終試験でハンゾー相手に退かなかったとき(No.34)と同じく、父に会うことについてだけは、ゴンは自分のやり方を曲げません。
父は仕掛けで、息子は意地で応える。直接顔を合わせていない二人が、テープとカードを通してやりとりをしている。ヨミコミは、この回をそんな親子の遠距離の会話として読みます。G.Iの開始時にもジンの録音メッセージが流れていたこと(No.127「9月10日④」)を思い出すと、G.Iという舞台そのものが、ジンと息子のやりとりの場になっていたようにも見えてきます。
今の自分に置き換えると
目標に近づいたと思った瞬間に、思っていたのとは違う場所に着いてしまうことがあります。努力して手に入れた機会が、望んでいた形ではなかったとき、がっかりして投げ出したくなるのは自然なことです。
この場面は、予定外の行き先を「失敗」とだけ見ない読み方を示してくれます。着いた場所にいた人や、そこで始まったことが、次の道につながっていくこともある。ゴンにとってのカイトとの再会がそうだったように。
また、答えをすぐに教えてもらえる状況で、あえて自分で探すという選択もあります。いつでもそうすべきだという話ではありませんが、自分にとって大事な目標ほど、自分の手でたどり着きたいと思う気持ちは、大切にしていいものだと思います。
あわせて読みたい
探しに来いと挑発したくじら島のテープ(No.66)と、ついに会えた世界樹の上での言葉(No.339)を続けて読むと、「ジンの言葉」の流れが見えてきます。