浦飯幽助が子どもを助けて命を落とすのは、第1巻 act.1「さよなら現世!!」です。『幽★遊★白書』は、主人公が第1話でいきなり死ぬところから始まる物語です。主人公の死に触れるので、未読の方はご注意ください。
どんな場面か
教師も手を焼く不良として知られていた幽助が、ある日、子どもを助けようとして事故にあい、幽霊になってしまいます。集英社の1巻紹介文は、この死を予定外のものとして紹介しています。そこから、幽助が生き返るための試練が始まります。
評判と行動が、最初からずれている
ここからは、作中に描かれた事実ではなく、ヨミコミとしての読みです。
第1話の幽助は、周りから不良として見られている少年です。ところが、物語の中で彼が最初に見せる大きな行動は、子どもを助けることでした。周りの評判と、本人がとっさに取った行動が、物語の一番最初からずれているわけです。
この並べ方には、はっきりした狙いがあると読めます。読者は幽助という人物を、周りの評判からではなく、行動から知ることになるからです。本当は根がいい少年だと地の文で説明されるより、一度の行動を見せられるほうが、人物の芯は強く伝わります。しかも、その行動は考える時間のない一瞬の判断でした。損得を計算する余地がないからこそ、幽助の根っこにあるものが、飾りなしで見えてきます。
見返りのない行動として描かれている
もう一つ大事なのは、この人助けが、幽助に何の得ももたらさない形で描かれていることです。助けた結果、幽助は命を落とします。
見返りがまったくない状況で取った行動は、誰かに見せるための行動ではありえません。第1話で主人公を死なせるという思い切った始め方は、幽助の行動に裏の目的がなかったことを、読者にまっすぐ伝える形だったとも読めます。
予定外とされた死
1巻紹介文は、この死を予定外のものとして紹介しています。ヨミコミはここに、物語のエンジンがあると考えます。
予定外ということは、幽助がこの日にこういう形で命を落とすことを、誰も見込んでいなかったということです。周りの評判が幽助を不良としか見ていなかったように、物語の始まりそのものが、幽助への見込み違いから動き出す。その見込み違いを、生き返るための試練という形で取り戻していくのが、この先の物語だと読めます。
不良というラベルを貼られた少年が、ラベルではなく行いで自分を示していく。第1話の予定外の死は、その長い物語の最初の一歩として置かれていると考えます。
主人公を最初に死なせる、という始め方
少年漫画の第1話は、主人公の強さや夢を見せて、読者を引き込むことが多いものです。この作品は逆に、第1話で主人公から命そのものを取り上げます。
ヨミコミは、この始め方が、読者と幽助を同じ出発点に立たせていると考えます。何も持たない状態から、幽助が何を取り戻し、何を選んでいくのかを、読者は最初から一緒に見ていくことになる。物語の一番低いところから始まるからこそ、そのあとの一歩一歩が重く感じられます。自分がいなくなったあとの世界がどう描かれるのかは、ぜひ第1話から本編で確かめてください。
今の自分に置き換えると
周りからの見られ方と、自分が思う自分の姿がずれていると感じることがあります。一度ついた評判は、なかなか変わりません。
この場面から読み取れるのは、人を表すのは評判より行動だ、ということです。評判はそれまでの積み重ねでできていますが、それがその人のすべてを言い当てているとは限りません。肩書きや周りの声で自分を決めつけてしまいそうなとき、自分がとっさに何を大事にして動いたかを思い出してみると、評判とは別の自分が見えてくるかもしれません。
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