ロイ・マスタングがエンヴィーと向き合う場面は、第23巻 第94話「復讐の炎」です。題のとおり、この回では、ロイの炎がエンヴィーを焼く場面が描かれます。
このページでは、戦いの決着やエンヴィーのその後には触れません。考えたいのは、復讐する人と、そのそばに立つ人の関係です。
どんな場面か
物語の終盤、中央の深い場所で、ロイは仇敵のエンヴィーと向き合います(第23巻の紹介文による)。第94話では、ロイの炎がエンヴィーを焼く場面が描かれ、同じ回には、銃を構えたホークアイの姿もあります。
その銃が何に向けられ、どう使われるのかは、このページでは書きません。ぜひ本編で確かめてください。
さかのぼると、第4巻 第16話
ロイの復讐の始まりは、第4巻にあります。第4巻の紹介文でロイの盟友と書かれているヒューズが、物語から去ったあと、第4巻 第16話「それぞれの行く先」で、ロイはヒューズの仇を討つとホークアイに話しています。
第16話から第94話まで、およそ80話。題に復讐という言葉が置かれた第94話で、その思いが一つの形になって現れます。
考察:復讐と、そばに立つ人(ここからは当サイトの読み)
ここから先は、作中に描かれた事実ではなく、ヨミコミとしての読みです。
復讐は、誰のためのものか
復讐を果たしても、失った人が戻ってくるわけではありません。ロイもそれは分かっていた、と読めます。それでも人は、仇を討ちたいと願います。
ヨミコミは、それを、失った人への思いに、ほかの置き場所が見つからない状態として読みます。悲しみは、向ける先がないと、自分の中で燃え続けるしかありません。題の炎は、ロイが放つ炎であると同時に、第16話からずっと消えずにくすぶっていた怒りのことでもある、と読めます。
もう一つ見ておきたいのは、この時期のロイの立場です。第22巻の紹介文にあるとおり、ロイは東の軍部の仲間を率いて、中央で大きな行動を起こしています。多くの人を率いる立場の人が、一人の人間としての怒りに身をまかせたとき、何が起きるのか。第94話は、その危うさを、もっとも近い距離で見せる回としても読めます。
始まりを知っている人が、その場にいる
紙面で確かめられるのは、銃を構えたホークアイがこの回にいる、というところまでです。
ここで思い出したいのは、第16話で、ロイが仇を討つと話した相手がホークアイだったことです。つまり、ロイの復讐が始まった瞬間を知っている人が、その復讐が形になる場にも居合わせていることになります。
ヨミコミは、ここに一つの構図を読みます。復讐を誓った言葉を聞いた人は、その誓いの重さを、本人の次によく知っている人でもあります。怒りがどこから来て、どれだけ長く続いてきたのか。それを知っている人が同じ回にいることで、この戦いは、ロイ一人の話ではなくなっていると読めます。
そばに立つ人は、何を見ているのか
この回のホークアイが、ロイの復讐にどう向き合うのかは、このページでは書きません。ヨミコミが考えたいのは、その手前のことです。
そばに立つ人は、相手の怒りを分かったうえで、その先で相手が失ってしまうかもしれないものも見ています。怒りが生まれた理由を知っているからこそ、その怒りを軽く扱うことはできません。それでも、怒りに身をまかせたあとで、その人がどんな人になってしまうのかは、本人よりもそばにいる人のほうが先に気づくことがあります。大切な人の怒りと、その人のこれからの両方を同時に見てしまう。そばに立つというのは、そういう立場だと考えます。
復讐の物語は、多くの場合、果たすか、果たせないかで語られます。けれど第94話は、復讐する本人だけでなく、その姿を見ている人の側からも読める回です。燃え上がる炎と、それを見つめる人。その二つが同じ回に置かれていることに、この場面の深さがあると考えます。
今の自分に置き換えると
どうしても許せない相手や出来事に出会うことはあります。怒りを持つこと自体は、自然なことです。
ただ、その怒りにまかせて動いたとき、自分が大事にしてきたものまで失ってしまうことがあります。この場面は、怒っている本人の目線だけでなく、そばにいる人の目線でも読めます。大切な人が怒りで何かを失いそうなとき、ただ味方をするのか、立ち止まるよう声をかけるのか。どちらが相手のためになるのかを考えるきっかけとして、この場面を読むことができます。
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