ルフィがローグタウンの処刑台に乗せられ、夢を叫んだあと仲間の名を呼んで笑う場面は、第11巻 第99話「ルフィが死んだ」です。アニメでは第52話にあたります。東の海編の最後の町で描かれる、物語の大きな節目の回です。
どんな場面か
ローグタウンは、海賊王ゴール・D・ロジャーが処刑された町です。ルフィはこの町で、因縁のあるバギーに捕まり、ロジャーと同じ処刑台に乗せられます。最期の言葉を求められたルフィは、自分は海賊王になる男だと叫び、駆けつけようとする仲間たちの名を呼んで笑います。その場にいた海兵スモーカーは、その笑顔に22年前のロジャーの姿を重ねます。そして刃が振り下ろされる直前、処刑台に雷が落ちます。
考察
話タイトルと、実際に描かれたこと
作中の事実として、この回のタイトルは主人公の死を告げるような言葉です。しかし雷によって処刑台は崩れ、ルフィは生き延びます。
ここからはヨミコミの読みです。このタイトルは、読者に最悪の結末を一度覚悟させるための仕掛けとして働いています。本当に死ぬかもしれないと思わせたうえで、ルフィがその瞬間に何を言い、どんな顔をしたかを見せる。死の間際という極限の場面でこそ、その人物の本当の姿が出る。第99話は、東の海編の締めくくりに、主人公がどういう人間なのかを最も短い形で示した回だと考えます。
最期に口にしたのは、夢と仲間だった
事実として、最期の言葉を求められたルフィが口にしたのは、海賊王になるという夢と、仲間たちの名前でした。命乞いも、恨みの言葉もありません。
ヨミコミは、この二つの組み合わせに注目します。夢だけを叫べば、それは自分のための言葉です。けれどルフィは、自分を助けに来ようとしている仲間に向けて呼びかけ、笑っています。ここで見えるのは、自分の死を前にしても、意識が仲間のほうへ向いている人物です。死の恐怖がないわけではなく、最後の瞬間に何を大事にしたいかがはっきりしている。その迷いのなさが、あの笑顔になったのだと読みます。
スモーカーが見た、22年前の笑顔
事実として、この町でロジャーが処刑されたことは、第1話の冒頭で語られる大海賊時代の始まりそのものです。ロジャーは最期の言葉で世界中の人々を海へ駆り立てました。スモーカーは、処刑台の上のルフィの笑顔に、22年前に同じ場所で最期を迎えたロジャーの姿を重ねます。
ヨミコミの読みでは、この回想は、ルフィが海賊王と同じ場所に立っただけでなく、同じ種類の人間かもしれないと、海軍の側の人物が直感した瞬間です。敵であるスモーカーの目を通すことで、主人公への評価が身内の贔屓ではなく、外から見た事実として読者に届きます。この日からスモーカーはルフィを追い続けることになり、二人の因縁もここで本格的に始まります。
始まりと終わりの町で、東の海編が閉じる
ローグタウンは、海賊王が生まれ、そして処刑された町です。ヨミコミは、ルフィがこの町で死に最も近づいたことに、構成上の意味を読み取ります。海賊王の終わりの場所で、次に海賊王を目指す者が死をくぐり抜けて先へ進む。東の海編がここで閉じ、物語は偉大なる航路へと舞台を移します。第1話で帽子を託されて旅立った少年が、この回で一つの試練を越えたと読むこともできます。
今の自分に置き換えると
追い詰められたとき、人は自分が本当に大事にしているものに気づくことがあります。普段は迷っていても、ぎりぎりの場面で口をついて出るものは、案外はっきりしているものです。
この場面は、何を守りたいか、何を目指しているかを自分の中で決めておくことが、迷ったときの支えになることを描いています。もちろん、現実の困難は処刑台のように一瞬で終わるものではありませんし、笑っていられない日もあります。それでも、自分が最後まで手放したくないものを一つ言葉にしておくと、迷ったときに戻る場所になるかもしれません。
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この旅の出発点であるシャンクスとの約束の場面と、同じく死の間際の言葉が時代を動かした頂上戦争の場面をあわせて読むと、この作品が最期の言葉をどう描いてきたかが見えてきます。